黒澤明が映画に与えた影響

皆さんは黒澤明という映画監督をご存知でしょうか?映画「七人の侍」は黒澤映画の中でも特に有名で、見たことはなくても名前くらいは誰もが一度は耳にしたことのある作品だとは思います。

この黒澤明監督ですが、私たちが現在観ている映画の演出方法や王道ストーリーをいくつも創りだした方で、今では大ヒットしている「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや「スター・ウォーズ」シリーズなどにも大きな影響を与えた監督です。

黒澤明監督の作品は、多くの映画に影響を与えています。今回は様々な映画に影響を与えた黒澤明作品の中でも特に影響を与えた「用心棒」「椿三十郎」を中心に見ていきたいと思います!

目次

1.黒澤明
1-1.黒澤明の経歴
1-2.黒澤明監督のこだわり

2.用心棒
2-1.用心棒のあらすじ
2-2.用心棒が時代劇に与えた影響
2-3.インディ・ジョーンズと用心棒
2-3-1.スティーヴン・スピルバーグと黒澤明
2-3ー2.黒澤明作品のオマージュ

3.椿三十郎
3-1.椿三十郎のあらすじ
3-2.椿三十郎が時代劇に与えた影響

4.黒澤映画のポイント
4-1.殺陣の重要性
4-2.殺陣の魅力

1.黒澤明

先程少し説明した黒澤明監督ですが、実際に監督の事を知っている人、作品を観た人はあまり多くないかと思われます。

七人の侍が今から65年前の作品で、カラーでは無くモノクロの作品、DVDレンタルショップでは隅っこにある時代劇コーナーに置かれており、たまたま手にとる事も中々ないかと思われます。

なので、ここではあまり黒澤監督の事を知らない人に向け、少し詳しく黒澤明監督について紹介していきたいと思います。

1-1.黒澤明の経歴

黒澤明(1910年3月23日~1998年9月6日)
1910年現在の東京都品川区東大井にて7人兄弟の末っ子として生まれる。
父親は現在の日本体育大学の体操の先生をしていた。

1916年に幼稚園に入園する。このころから、父に連れられ映画をよく見るようになる。このときはウィリアム・S・ハート主演の西部劇や連続活劇などの洋画をよく観ていたという。
小学生の頃にいじめに会うが、そのことがきっかけで絵を描くことが好きになり、中学を卒業後画家になることを目指し、川端画学校に通い画家となった。

1936年に画業に見切りをつけP.C.L.映画製作所(現在の東宝)の助監督募集に応募し、100倍の難関を突破し、入社した。
その後、1943年「姿三四郎」で監督デビューし、この作品が中山貞雄賞を受賞し、映画監督への道を歩むこととなる。

1-2.黒澤明監督のこだわり

黒澤監督の作品はどの作品も見応えがあり、面白いのですがその理由は妥協を一切許さない演出にあったといわれます。
黒澤監督は完璧主義者で、妥協を許さない厳しい演出で有名でした。当時はリハーサルは重視されていなかったのですが、黒澤監督は俳優の演技が自然に見えるまでリハーサルを何度も行い、役になりきれるまで入念に行っていたり、本読みの段階から衣装を着させたりすることもあったそうです。

「蜘蛛巣城」では三船敏郎演じる鷲津武時が全身に矢を浴びせられ、ハリネズミのようになり最後を遂げるシーンでは本物の矢を使用し、命がけのスタントが行われたり、演出への強いこだわりと妥協が一切ない監督だったようです。

2.用心棒

黒澤明監督の作品の中でも評価の高い「用心棒」。
この「用心棒」は後の映画業界に様々な影響を残している作品です。まずはここから見ていきましょう。

2-1.用心棒のあらすじ

まずは「用心棒」の簡単なあらすじを紹介します。

2つのヤクザの勢力が対立している宿場町に浪人である桑畑三十郎が訪れる。三十郎は飯屋で食事をもらったお礼に町でひと暴れして借りを返そうとするが、この町が2つの勢力対立で町が貧窮していることを伝えられ、早くこの町を出るように言われるが、三十郎はこの町に腰を据えると言い出すのであった。
その後、用心棒として片方の勢力に入り両勢力とも壊滅させようとするが・・・

用心棒は三船敏郎演じる桑畑三十郎と仲代達也演じる新田の卯之助がとてもカッコよく、ハードボイルドな作風の時代劇となっております。

2-2.用心棒が時代劇に与えた影響

現在私たちが見ている舞台やドラマ、映画のアクションシーンや殺陣シーンで刀を振る効果音や斬撃音が当たり前のモノとして使われていますよね。

じつはこの効果音、初めて演出として使われたのは「用心棒」でした。

それだけではなく1対1での決闘シーンで決着がついたときにお互いが静止し片方が倒れて死ぬという、今ではお決まりの演出も「用心棒」で初めて使われた演出でした。
今では当たり前になってしまった演出方法ですが、始まりは黒澤明監督が思いついた演出方法でした。黒澤監督はリアリティのある殺陣・チャンバラを追求していたようですので、よりリアルに見えるように考え抜き思いついた演出なのかもしれませんね。

2-3.インディ・ジョーンズと用心棒

スティーヴン・スピルバーグ監督の大人気長寿シリーズである「インディ・ジョーンズ」シリーズと用心棒。一見つながりが一切無さそうな組み合わせですが、実はつながりがあったのです。

2-3-1.スティーヴン・スピルバーグと黒澤明

未知との遭遇やジュラシック・パークシリーズなどで人気を誇るスティーヴン・スピルバーグ監督ですが、新しい映画を撮る、撮影に行き詰るといったときに必ず行う事があるそうです。

そのようなときは映画の原点を見つめ直すために黒澤作品、特に「七人の侍」を鑑賞するそうです。なんせスティーヴン・スピルバーグは黒澤明を師と仰ぐほど影響を受けた人物で、黒澤明の大ファンだそうです。黒澤監督の晩年の作品「夢」ではスティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスが製作に協力したりと深い関係があったみたいです。

2-3-2.黒澤明作品のオマージュ

スティーヴン・スピルバーグ作品では様々な所で黒澤作品のオマージュを見る事が出来ます。例えば「未知との遭遇」では砂嵐からジープが現れるシーンは「蜘蛛巣城」の霧の中から城が現れるシーンのオマージュ、「プライベート・ライアン」の冒頭の乱闘シーンは「乱」のクライマックスシーンの落城シーンのオマージュ、あの「インディ・ジョーンズ」シリーズ最初の作品「レイダース/失われたアーク」では主人公が後姿だけで顔を見せない最初のシーンはそのまんま「用心棒」の冒頭シーンのオマージュとなっています。

用心棒という作品は現在の常識となっている演出手法の起源になっている作品で、多くの作品に影響を与えた作品みたいですね。効果音や血糊など今では当たり前の手法ですが、この作品が無ければ現在のお決まりの演出方法は無かったのかもしれませんね。

3.椿三十郎

3-1.椿三十郎のあらすじ

次は用心棒の続編である「椿三十郎」の簡単なあらすじを紹介します。

真夜中、古いお寺に若い侍が集まり密談をしていた。

若い侍のリーダー格の人が自分たちの職場の汚職を密告しようとしたが、相手にされなかった事、別の上司の菊井にこの事を相談したら「共に立とう」と答えてくれた事を話していた。
この話で盛り上がっていると奥の部屋から一人の浪人が現れ、密談を聞かれてしまい緊張している侍たちに「その菊井の方が危ない」と言う。その通り菊井は汚職をしているグループと繋がっており、気づいた時にはこのお寺は菊井の手勢に囲まれていた。

若い侍達は浪人の機転のおかげで脱出し、自分たちの甘さに後悔をするが命がけで巨悪に立ち向かうことを決意する。
愚直な若い侍達に、呆れた浪人だったが「死ぬも生きるも我々九人」という声を聞くと、「十人だ。お前たちのやる事は危なくてみちゃいられない」と言い共に行動をするようになる・・・

椿三十郎は用心棒で試した演出方法などを経て制作された作品となっていて、普段時代劇や白黒の映画を観ない人でも見やすくとても面白い作品となっています。

3-2.椿三十郎が時代劇に与えた影響

続編である「椿三十郎」も後の時代劇に大きな影響を残しました。

作中の最後に三船敏郎演じる椿三十郎と仲代達也演じる室戸半兵衛が一対一の決闘をするシーンで斬られた体から大量の血が噴き出すという特殊効果が使用されました。
今見るとあまりの血糊の量に少々驚きますが、当時の人たちからしたら衝撃的だったようでその後の時代劇では斬られた人から血が噴き出すという手法が多用されるようになりました。

このようなリアルで過激な描写はGHQによって規制されていましたがあまりの人気に激しい効果音や血糊等の黒澤明監督の手法を似せたチャンバラ映画が続出するようになったのです。

4.黒澤映画のポイント

さて、ここまで黒澤映画の演出方法や与えた影響を追っていきました。その中で評価される事が多かったものが、殺陣・アクションシーンでの演出でしたね。

ここで紹介した内容では用心棒では1対1の演出方法、椿三十郎では血糊や効果音が殺陣シーンでの演出方法が後の映画業界へ影響を与えました。黒澤明監督がこだわった殺陣はどのようなものなのでしょうか。

4-1.殺陣の重要性

以前の内容には黒澤明監督はリアルな殺陣を求めていた事を書きましたが、リアルな殺陣とはどういうものなのでしょうか。

当たり前の事なのですが、そもそも殺陣は実際に殺し合いをしている訳ではなく、殺し合いを演じているのです。それを演じている役者は本気で殺し合いをしているお芝居をしているのです。そのお芝居をより、リアルにする為、役者がさらに役に入り込めるように血糊を使ったり、効果音を使ったり、本物の日本刀、矢を使ったりしていたのです。

そこまで殺陣の演出に力を入れたのは、作品の重要なシーンやOPや終盤のシーンにある事が多く、作品全体の出来に大きく関わるので黒澤監督は殺陣シーンを大切にしていたのではないでしょうか。

4-2.殺陣の魅力

一度、黒澤映画の殺陣を観ていただければ分かるのと思うのですが、とてもカッコよく、ワクワクしてしまいます。1対1のシーンでは、お互いの刀を抜くまでの間、睨み合う表情、剣の扱いすべてが見どころとなっています。

何故殺陣は魅力に感じるのでしょうか。それはお互いの「コミュニケーション」・「信頼関係」にあるかと思います。いくら模造刀や木刀とはいえ、実際に相手に当ててしまいますと大けがをしてしまいます。お互いの信頼関係が無ければ、安全に全力で立ち廻りは出来ません。それだけではなく、観ていて心地よい間やリズムを演じるにはお互いの呼吸が合わなければ出来ないため。「コミュニケーション」・「信頼関係」が大切になってくるのです。

殺陣を観ていて面白いと魅力に感じるのは、このお互いのコミュニケーションが根本的な要因になっているのではないでしょうか。

まとめ

今回は黒澤映画がこの映画業界へ与えた影響を見ていきました。

黒澤明監督の時代劇は今みても面白く、白黒映画に抵抗のある人も楽しめると思います。スティーヴン・スピルバーグ監督のみだけではなくゴッドファーザーのフランシス・フォード・コッポラ監督やスター・ウォーズのジョージ・ルーカス監督等、様々な人に影響を与え世界の黒澤と呼ばれるようになったのですね。

今ではレンタルDVDショップなどに行けばどこにでも黒澤作品が置いてあるので、興味を持たれたら一度みてはいかがでしょうか。
今の時代劇では中々見られないような、とてもリアルでかっこいい殺陣シーンが沢山あり一気に黒澤監督の世界観にのめり込んでしまうと思います。

時代劇を観て、殺陣をやってみたいと思っても中々機会がございませんが、殺陣教室サムライブでは体験レッスンを行っておりますので、興味がありましたら一度体験をしてみるのはいかがでしょうか。
殺陣ならではの、人を斬ったり、斬られたりする事でのストレス発散、日常生活では体感できないコミュニケーションの取り方など様々な発見があるかと思います!