手裏剣や苦無(くない)の使い方

忍者といえば真っ黒の忍者装束を想像し、忍者刀を背負い手裏剣や苦無を使い華麗に相手と戦う姿を想像するかと思います。
実際の忍者は対人戦をメインにしていなかったことは前回のコラムで紹介しましたが、手裏剣等の忍具はどのように使用していたのでしょうか?
対人戦はメインでは無かったものの、沢山の忍具が実物・書物で残っているので実際に使用していた事には間違いはないのですが、実際の使い方は私達が今想像しているものと違うようです。
今回は実際に忍具はどのように使用されていたかを見ていきたいと思います。

目次

1.忍者装束の色

2.忍者刀の使い方
2-1.忍者刀の特徴
2-2.下緒七術

3.手裏剣の使い方
3-1.手裏剣の種類

4.苦無の使い方

5.様々な仕込み武器

まとめ

1.忍者装束の色

最初は忍者の衣装について紹介していきたいと思います。
現在忍者装束として想像されるのは、全身真っ黒で頭巾で顔を隠し、羽織・手甲・脚絆を装着している姿だと思われます。
実際は真っ黒では無く、渋柿色で忍者装束が実際に使われるのは限られた場合のみでした。

現在でも真っ黒の礼服が高いように、昔も黒色の衣装はとても高価でした。忍者は下級武士よりも身分が低く、貧乏でしたので真っ黒な忍者装束を用意するのは不可能だったそうです。
それだけでは無く、夜に活動する時は月光などがあり真っ黒だと周りより色が沈んでしまい、逆に目立ってしまったそうです。
その為、忍者装束は真っ黒では無く渋柿色だったそうです。真っ黒の忍者装束が使用されたのは江戸時代に舞台で忍者を登場させる際の衣装として使用されたのが始まりで、こちらのイメージが現在にも伝わっているそうです。

2.忍者刀の使い方

戦争時、忍者は城の放火や暗殺、足止めの任務が中心だったので戦闘要員ではありませんでした。アニメなどのイメージとは違い戦闘のプロでは無かったのです。その為、正面から戦えば武士には勝てませんでした。
そんな忍者が生き延びる為に変化していった武器が忍者刀でした。
忍者刀、忍び刀とも呼ばれる武器がどのようなものだったかを見ていきましょう。

2-1.忍者刀の特徴

普通の日本刀とは形も長さも違います。日本刀は刃渡り70cm程で、刀身には反りがありました。
それに比べて忍者刀は刃渡り40~50cm程で、刀身には反りがありませんでした。それに加えて鍔(つば)は四角なものが多く、柄の部分は暗い色でツヤが無い物で漆が塗ってあり滑り止めの紐が巻いてありました。
反りが無いので人を斬るのには向いていませんでしたが、忍者の任務は情報収集が中心の為、動きやすくする為に軽く短く作られていました。
それだけでは無く鞘の先端は金属製で尖っており、地面に突き刺しやすく作られていました。
忍者刀の戦闘力はいざという時の保険で、忍者は基本的に戦闘を回避し、逃げられるのならは逃げるのが基本だったようです。

2-2.忍法のひとつ、下緒七術

忍者刀は先程説明した特徴だけではなく、下緒(刀の鞘に結んである紐)にも違いがありました。通常のものより、長い紐が使用されていたそうです。
その下緒七術を簡単に説明していきたいと思います。

1. 座探り:鞘を刀の先端ぎりぎりまで抜き、下緒を口にくわえた状態で隠れたり、適索をします。鞘に人が当たった感触があれば刀を引き、一歩前に進み刀を突き刺し暗殺をする術。
2. 吊り刀:下緒を口で加え、刀の鍔を地面に突き刺し刀を踏み台にし、城壁などを乗り越え潜入する術。乗り越えた後は下緒を引っ張り刀を回収する。
3. 旅枕:旅先などで寝る際に大小の刀を下緒で結び、下緒を自分の下に隠す。刀が奪われそうになった時や逃げ出す時に瞬時に動けるようにする術
4. 陣張り:木と木を下緒で結び、大きめの布をかける。簡易テントのようなものを設営し、雨や寒さ対策をする術。
5. 用心縄:部屋の入口の両端に下緒を膝の高さで結ぶ。敵襲や逃げる際の足止めとして使用する術。
6. 槍止め:戦闘時に忍者刀のリーチの短さを補うために柄と鞘を下緒で結び、短い槍のように使う術。
7. 縄:自分がケガをした際に止血する縄に使用したり、捕まえた敵を拘束する際に使用

以上が下緒七術になります。下緒一つでここまで様々な事が出来たようです。忍術は持っている物を最大限に活かすための方法だったのかもしれませんね。

3.手裏剣の使い方

時代劇や漫画、アニメどの作品の忍者も使用している武器「手裏剣」実際の忍者は手裏剣をどのように使用していたのでしょうか。
忍者をモチーフにした施設などでも手裏剣を投げる体験などが現在でも出来ますが、形状や投げ方なども詳しく見ていきたいと思います。

3-1.手裏剣の種類

手裏剣の種類は大きく分けて2種類ありました。「棒手裏剣」と「車剣」の2つです。
よくイメージされる手裏剣は「車剣」で、形状が十字だったり四角だったり様々な物があります。一方「棒手裏剣」は名前の通り棒状で先端尖っていました。
実際に多用されていたのは「棒手裏剣」の方で、「車剣」はあまり使用されてはいませんでした。
棒手裏剣の方が安価で殺傷能力が高く、携帯性に優れていたのに対し、車剣は携帯性に欠け殺傷能力は高くは無く、高価だったそうです。車剣の利点は投法に技術が必要無く、致命傷を与えられないが、どの部位に当たってもとりあえず傷を与える事が出来た点だそうです。

現在私達が忍者体験等で手裏剣を投げる場合は「車剣」が多い理由はここにあるのかもしれませんね。

4.苦無の使い方

創作もので登場する苦無は、両刃の短刀のような扱いをされており、忍者の武器として登場する事がとても多いかと思います。
実は、実物の苦無は刃は無く、そもそも武器では無かったそうです。
実際の苦無は現在でいうシャベルのような物でした。苦無にも2種類の形があり、三味線の撥(ばち)のような物と皆さんが想像する、創作物でよく登場する跳び苦無です。
撥のような形状の苦無は、シャベルと使用用途は同じで穴を掘ったりするのに使用していました。
もう一方の跳び苦無は同じく、地面を掘り返したりするのが主な使用用途でした。跳び苦無は持ち手部分の上に輪があり、そこに紐を結ぶ事が出来ます。跳び苦無は穴掘り以外に楔のようにも使用されていました。
崖のぼりなどが得意な忍者が先に崖を上り、跳び苦無を崖に打ち込み結んだ紐を下に垂らし、後の忍者が素早く登れるようにしていました。
このように、苦無は戦闘では無く、忍者の活動をサポートする忍具として使用されていたそうです。
苦無を戦闘で使用するのはやむを得ない場合の時であって、創作物のように苦無を使って戦うことはほとんど無かったそうです。

5.様々な仕込み武器

忍者の仕事の1つに暗殺がありました。その時は、下緒七術で紹介した座探りを使用する他に仕込み武器を使用していました。
座頭市が使用している仕込み杖も忍者が使用していたとされています。仕込み杖の中に仕込んでいるのは刀だけは無く、槍を仕込んでいたり、分銅と鎖・鎌が仕込んであり、仕込み杖を振ると鎖鎌になるものもあったそうです。
仕込み武器は杖だけではなく、「手馴し」と呼ばれる鉄扇、キセル等、常に手に持っていておかしくない物に短剣を仕込んであり、暗殺に使用されていたそうです。

まとめ

今回は有名な忍具の使用方法等を中心に紹介していきました。ここで紹介した忍具以外にも「握り鉄砲」と呼ばれるボールペン程度の長さの鉄砲や、角手と呼ばれる隠し武器等様々なものがありました。
忍者は下級武士より身分は低く、武士では武士道の概念からとても出来ない仕事をしていました。その活動を助けていたのが工夫をこらした沢山の忍具だったようです。
次回はいよいよ忍術について詳しく見ていきたいと思います。創作物では派手でカッコイイ忍術が沢山存在しますが、当時の忍者達はどのような忍術を使い、生き延びていたかを見ていきたいと思います。