時代小説のヒーロー達 

最近テレビ等では見る機会が減った時代劇ですが、昔はチャンバラスターと言われるような役者さんがいたように、時代劇はとても人気のあるコンテンツでした。

サムライブの生徒さんの中でもレッスンを受けた理由を聞いてみると「小さい頃みた時代劇が好きで殺陣に興味があったから」や「舞台をみて殺陣をしていた役者さんがカッコよくて自分もやってみたくなったから」等、皆さん殺陣を見る機会がありそれに憧れる人が多いようです。

観た人を魅了する殺陣がある時代劇の歴史は古く、沢山の作品がありました。今回は時代劇・時代小説のスター達を皆さんと見ていきたいと思います。

目次

1.旗本退屈男

1-1.佐々木味津三と旗本退屈男

1-2.旗本退屈男と市川右太衛門

1-3.旗本退屈男と映像作品

2.丹下左膳

2-1.丹下左膳と大岡政談

2-2.丹下左膳と大河内伝次郎

2-3.丹下左膳と映像作品

まとめ

1.旗本退屈男

最初に紹介していくのは「旗本退屈男」という作品です。時代劇にあまり馴染みのない方は聞いた事もないかもしれません。

この旗本退屈男は直参旗本「早乙女主水之介」を主人公とする時代小説で昭和4年(1929年)に発表された作品です。

その後30本以上の映像化作品が制作され、様々な名優が早乙女主水之介を演じてきました。

これだけ有名になった作品を知らないのはもったいないと思いますのでここで詳しく見ていきましょう。

1-1.佐々木味津三と旗本退屈男

この旗本退屈男は佐々木味津三が昭和4年(1929年)に「文芸倶楽部」に掲載され11作が発表されました。

作者・佐々木味津三は元々純文学作家で芥川龍之介と交流のある作家でしたが、大衆作家に転身し、この「旗本退屈男」を発表しました。

純文学から大衆作家へ転身したのは多額の借金と子ども達を遺して死んでいった兄の肩代わりをするためでした。

旗本退屈男が作中で「退屈」という言葉を沢山使っていますが、作者の佐々木味津三は十種類以上の病気を抱え暇が無い状況でこの作品を作り上げていたそうです。

1-2.旗本退屈男と市川右太衛門

時代劇映画のヒーローには丹下左膳なら大河内伝次郎、眠狂四郎なら市川雷蔵といったような役者と役がセットになっている事が多いです。この旗本退屈男は市川右太衛門が長年演じ、旗本退屈男といえば市川右太衛門という関係が完成されています。

旗本退屈男の中で「諸羽流正眼崩しの構え」という構えが出て来るのですが、これは小説内にももちろん出て来るのですが、細かい描写が無いため映像化する際に主演の市川右太衛門が自ら構えを作ったそうです。

市川右太衛門は歌舞伎役者でしたので、歌舞伎での衣装や構えなどを作品に多く取り込んだ事も人気がでた一つの要因かもしれませんね。

1-3.旗本退屈男と映像作品

旗本退屈男は戦後、戦前含め30作品以上映像化された作品です。一番最初に映像として具現化したのは市川右太衛門でした。その為歌舞伎で「燕でん」と言われる髷や派手な衣装が使用されているのは右太衛門が最初に早乙女主水を演じたからでしょう。

右太衛門以外にも大川橋蔵や綾小路絃三郎なども早乙女主水之介を演じましたが、右太衛門には及ばなかったそうです。

TV時代劇でも制作されており高橋英樹や北大路欣也が主演を演じました。

高橋英樹はこの作品がきっかけで「桃太郎侍」に繋がり人気を博しました。市川右太衛門の息子の北大路欣也も父と同じ役を演じ衣装や動きなどを右太衛門によせ熱演をしたそうです。

2.丹下左膳

丹下左膳と言われてピンとくる方はいるでしょうか。近年だと中村獅童が主演で映画化されたので、記憶に残っている方もいるかもしれません。

この丹下左膳は隻眼隻腕、つまり片腕(左手)片目(右目)で白の紋付に髑髏を染め出し、下には女物の真っ赤な長襦袢を着ているという派手な見た目でニヒルなヒーローでした。

この丹下左膳は「大岡政談」に出て来る悪役が始まりで、ただのわき役だったのですが講談の題材として登場してから丹下左膳の人気が出てきて、映像化までされることになりました。

2-1.丹下左膳と大岡政談

先程も少し紹介した通り丹下左膳は元々主役では無くて「大岡政談」の中の悪役でした。

「大岡政談」は作者林不忘の作品であの「大岡越前」が名裁きをする捕物の人気作です。

その作品の中で丹下左膳は名刀を求め、名刀の持ち主を斬り名刀を奪って逃走するという悪役でした。

悪役が人気を博すのは当時の日本では珍しいものでした。昭和初期という不安定な時期に民衆に求められたのは正義のヒーローでは無く丹下左膳のようないわゆるダークヒーローだったのかもしれません。

2-2.丹下左膳と大河内伝次郎

現在の丹下左膳の大元になった作品は東亜、マキノ、日活の三社が昭和三年に「大岡政談・鈴川源十郎の巻」を競作しました。その中で評価が高かったのは日活の作品でした。

日活の作品が封建的な武士社会に批判をする左膳が登場し、ここから左膳のニヒルなヒーローが生まれました。

この時の主演が大河内伝次郎でした。大河内伝次郎の君主に裏切られ悲壮感にあふれる演技が評判を呼び大ヒットしました。「大河内の左膳か、左膳の大河内か」という名声が生まれる程でした。

その後チャンバラスターの嵐寛寿郎や団徳麿が左膳を演じましたが、大河内伝次郎の作ったニヒルな左膳にはかなわなかったそうです。

その後人気があるため「こけ猿の巻」という「大岡政談」のスピンオフ的作品が丹下左膳が主役で制作されました。

そこで生まれた大河内伝次郎・丹下左膳の名台詞が「シェイは丹下、名はシャ膳」というもので、訛りの強い強烈なセリフがさらに人気を呼ぶことになりました。

2-3.丹下左膳と映像作品

大河内伝次郎が丹下左膳を演じていくと段々と人情味豊かな庶民のヒーローとなって行き、庶民のヒーローとなって行きました。この方向転換が功を奏し現代劇タッチのホームドラマ風作りが幅広い層に受けさらに人気になって行きました。

その後制作される丹下左膳の作品は監督によってニヒルな左膳とヒーローのような左膳の2種類に分けられるようになりました。丹下左膳は基本左手を使用するが、丹波哲郎だけが右手を使用していたそうです。

左膳を演じてきた俳優は中村錦之助、丹波哲郎、大友柳太郎、阪東妻三郎、仲代達也など様々な名優が演じてきました。

また丹下左膳に欠かせないのがパートナーである「お藤」という女性なのですがこちらも様々な女優達が演じてきました。中でも評判が良かったのが伏見直江や原駒子たちでした。

まとめ

今回は時代劇のヒーロー達の誕生を見てきました。

我々が良く知っている時代劇と言えば水戸黄門や遠山の金さん、必殺仕事人等ですが、それらが生まれる前に様々な種類の時代劇がありました。

時代劇と言えば勧善懲悪が多いですが、丹下左膳のようなダークヒーローも存在しており、様々な種類の時代劇がありました。

一度見てみるとチャンバラスターと役のハマり具合に驚くと思います。丹下左膳は最近もリメイクされた作品ですので、古い映画に抵抗がある方でも見やすいと思いますので、一度見てみることをお勧めします。