loader image

『十三人の刺客』これを観ずして時代劇は語れない!

時代劇作品紹介
講師の渡辺です!今回紹介するのは1963年公開の傑作時代劇『十三人の刺客』です。リアリティのある殺陣を目指して東映が打ち出した「集団抗争時代劇」の名作!片岡千恵蔵、嵐寛寿郎、月形龍之介といった大スター達が若手と組んで重厚な演技を見せる!

目次

1.作品概要1-1.あらすじ1-2.時代背景1-3.キャスト1-4.監督・工藤栄一2.『十三人の刺客』の殺陣や個人的に好きなシーン2-1.『十三人の刺客』の殺陣2-2.個人的に好きなシーン①新六郎のスカウト2-3.個人的に好きなシーン②剣客・平山九十郎2-4.衝撃のラスト!
        1. 講師の渡辺です!今回紹介するのは1963年公開の傑作時代劇『十三人の刺客』です。リアリティのある殺陣を目指して東映が打ち出した「集団抗争時代劇」の名作!片岡千恵蔵、嵐寛寿郎、月形龍之介といった大スター達が若手と組んで重厚な演技を見せる!
      1. 目次
        1. 1.作品概要1-1.あらすじ1-2.時代背景1-3.キャスト1-4.監督・工藤栄一2.『十三人の刺客』の殺陣や個人的に好きなシーン2-1.『十三人の刺客』の殺陣2-2.個人的に好きなシーン①新六郎のスカウト2-3.個人的に好きなシーン②剣客・平山九十郎2-4.衝撃のラスト!
  1. 1.作品概要
      1. 1-1.あらすじ
    1. 1-2.時代背景
    2. 1-3.キャスト
    3. 1-4.監督・工藤栄一
  2. 2.『十三人の刺客』の殺陣や個人的に好きなシーン
      1. ここから先は『十三人の刺客』の殺陣や好きなシーンについて書いていきます。重大なネタバレも含まれておりますので、作品をネタバレなしで楽しみたい方は映画を観てから読んでください。
    1. 2-1.『十三人の刺客』の殺陣
    2. 2-2.個人的に好きなシーン①新六郎のスカウト
    3. 2-3.個人的に好きなシーン②剣客・平山九十郎
    4. 2-4.衝撃のラスト!
        1. いかがだったでしょうか?この作品は2010年に三池崇史監督・役所広司主演でリメイクされたことでも有名ですね。2010年版は、敵の数が200人以上!稲垣吾郎が演じる斉韶が非道具合が凄すぎる!宿場の罠も凄い!と大アクション時代劇に仕上がっています。大成功したリメイク版としても知られています。2010年版と見比べてみるのもいいですね。

1.作品概要

1-1.あらすじ


弘化元年。明石藩の江戸家老・間宮図書が、将軍家慶の弟であり藩主の松平斉韶(菅貫太郎)の暴君ぶりを訴えて、老中・土井利位(丹波哲郎)の屋敷の門前で自決した。
斉韶は、次の年には老中に抜擢されようとしていたのだ。
土井は斉韶の事態を重く受け止め、表沙汰には処罰出来ない斉韶を、自身の最も信頼の置いている旗本の島田新左衛門(片岡千恵蔵)に暗殺するよう命ずる。
新左衛門は独自に11人の手練れを集め、暗殺計画を立てる。
明石藩には新左衛門のかつての友で頭のキレる軍師・鬼頭半兵衛(内田良平)がいるのだ。
新左衛門は策により、参勤交代で江戸から帰国する途中の行列を、今や様々な罠を仕掛けた要塞と化した宿場に誘導することに成功する。
飛び入り参加した木賀小弥太(山城新伍)も加え、ここに13人対53人の壮絶な死闘が始まる!

1-2.時代背景

1961年。時代劇が変わろうとしていました。
黒澤明監督『用心棒』が公開されたのです。
舞台は、荒廃し殺戮が繰り返される宿場町。主人公は名のない、薄汚い恰好をしたこれまでの時代劇スターとは全く違ったキャラクター。リアリティにこだわり、効果音を使い迫力のある殺陣。
この全く新しい時代劇の登場は「黒澤ショック」と呼ばれるほどの衝撃を日本映画界に与えました。

舞踊的な様式美の殺陣では観客が満足しないという結果になりつつあり、それまで頂点にいた東映時代劇は危機的状況を迎えます。
ここで東映は、リアリティのある殺陣を戦略に据えます。
片岡千恵蔵や市川右太衛門といった大御所スターを若手と組ませ、また時代劇に染まらない新劇の俳優達を起用。
そしてストーリーには、時代考証を基にした、任務遂行の「リアリティのあるアクション」を作ろうと打ち出しました。

こうして出来上がったのが、「集団抗争時代劇」でした。
これまでのようなヒーローのいない、等身の人間が政治に巻き込まれ、ただ命じられた任務を果たすべく死闘を繰り広げるというドラマ。
第1弾として長谷川安人監督、池上金男脚本で作られたのが、「十七人の忍者」。
そして続く第二弾が工藤栄一・池上金男ペア「十三人の刺客」です。

1-3.キャスト

島田新左衛門…片岡千恵蔵
老中・土井が信頼を置く直参旗本。
松平斉韶の暗殺を命ぜられ独自に刺客を集める。
常にどっしりと落ち着いており、的確な指示を出しながら計画を進める。
しかし甥の新六郎いわく、「困った困ったと腹の底では思っているが、顔で笑って引き受け、そして立派にやってのける。」人物とのこと。
演じる片岡千恵蔵は戦前・戦後の時代劇で活躍した「時代劇六大スタア」の一人。
この作品では若手と組んで重厚な演技で画面を引き締めました。
これ以降の時代劇では脇に回って存在感を放ちます。
70年代には多数のテレビドラマにも出演。

島田新六郎…里見浩太郎
新左衛門の甥。
剣の腕が立つが現在は放蕩三昧でなじみの芸者に養ってもらっている。
刺客への誘いを一度断るも、やはり武士の心を捨てられず参戦。
里見浩太郎はこの時から現在まで時代劇を支えてきたスター。
2020年のNHKで制作された『十三人の刺客』では老中・土井を演じています。
相当な二枚目!刺客達の中では一番出番が多く、大活躍しているように見えます。

倉永左平太…嵐寛寿郎
徒目付組頭。
新左衛門の右腕的存在。新左衛門と共に先頭に立って指示を出す。
剣の腕も相当なもの。
嵐寛寿郎は「時代劇六大スタア」の一人で鞍馬天狗などで知られる大スター。
殺陣シーンでは名乗りを上げ、新左衛門と共に屋敷に陣を構え指示を出します。クライマックスに登場し、敵の一番の遣い手・半兵衛を追い詰めます。

平山九十郎…西村晃
浪人。島田家の食客で剣の達人。

鬼頭半兵衛…内田良平
明石藩の家臣で軍師。新左衛門とは友である。剣の腕も立つ。

松平左兵衛督斉韶…菅貫太郎
残虐非道な行いをする明石藩藩主。
演じる菅貫太郎はこの役が当たり役となり、以降類似の役のオファーが絶えなかったという。

1-4.監督・工藤栄一

工藤栄一は59年に監督デビュー。
時代劇黄金期にあった東映で時代劇を監督していました。
『十三人の刺客』の監督に指名されその手腕を示すと、続けて、『大殺陣』『十一人の侍』と集団時代劇を手掛けます。
60年代後半に東映が主力をやくざ映画に切り替えると、それに合わせやくざ映画も多く監督。
70年代からはテレビドラマの演出を行い、必殺シリーズの演出も行いました。
あの名作、『必殺! III 裏か表か』でメガホンを取っています!

2.『十三人の刺客』の殺陣や個人的に好きなシーン

ここから先は『十三人の刺客』の殺陣や好きなシーンについて書いていきます。重大なネタバレも含まれておりますので、作品をネタバレなしで楽しみたい方は映画を観てから読んでください。

2-1.『十三人の刺客』の殺陣

この映画の殺陣の特徴は何といっても「リアリティを追求した集団抗争」であることです。
新左衛門達は宿場を買い取って事前に罠だらけの要塞と化し、そこに明石藩の行列が通るように仕向けました。
その罠とは、
まず宿場の四方を木の柵を作って塞ぎ(頑張って登らないと越せない)、宿場に入る時に渡った橋は落として、敵を宿場から出られなくします。
敵は大勢で右往左往し、出られそうなところを探しますが、出られそうなところがあると見せかけて、来たところにやはり柵があり、柵の上から矢の雨を降らせ、長槍で突き、丸太を落とします。
そして狭い所に敵が詰まったところを斬り伏せます。

敵は53人。こちらは13人ですが、13人が腕が立つといっても全員凄腕というわけではありませんし、多勢に無勢では勝ち目がありません。
しかしここでポイントは、劇中のセリフでもありますが、「こちらも相手も人を斬ったことはない。」というところです。
刺客側は存分に覚悟を決めていますが、行列の侍達は急に抗争になり死闘を繰り広げる覚悟は出来ていません。そこを叩くという立ち廻りです。

物語の前半でいくつかの人間ドラマが描かれるのですが、立ち廻りになるとそれらが嘘のように泥臭い戦いになります。
どんな達人でも、相手が3人いたら無傷ではすまないとどこかで聞いたことがありますが、あんなにクールな雰囲気のあった達人の九十郎も、「ああああああああ!」とか叫びながら敵の集団に突っ込んで怯ませ、1人斬ったら、「引くぞ!」と言って走って逃げ、突っ込んできた敵を斬って斬ってといった具合です。
そこに美しい剣技はありません。剣を振り回して集団を牽制し、払って斬る!斬る!まさに死闘!

明石側はと言うと、的確な指示が出せるのが半兵衛一人であり、腕が立つのも半兵衛一人なのです。途中からもはや半兵衛頑張れと言いたくなるほどまでに…。

2-2.個人的に好きなシーン①新六郎のスカウト

新左衛門の雇った刺客の二人が、剣の腕の立つ新六郎をスカウトしに行きます。
しかし、今や芸者の家に居候し、三味線の腕を磨いている新六郎は、
「三味線ならいつでも役に立つ。剣では役に立てない。」と言います。
来た二人は怒って帰りますが、
やがて新左衛門がやってきて、「俺も昔は放蕩して、三味線で身を立てようとしたが、難しくて、侍で死ぬ方が楽だと悟った。」と言って三味線を弾き始めます。その三味線の見事なこと。
そこまで三味線の腕を磨いても、武士であることからは逃れられないということなのだろうか…。
それを見つめていた新六郎は、その夜、自分の三味線の弦を刀で切り、芸者の家を後にします。

2-3.個人的に好きなシーン②剣客・平山九十郎

夜。新左衛門が刺客達と顔合わせをした後、帰路で別れ一人になった日置八十吉に、明石藩の侍二人が何のための談合だと問い詰めます。
日置は抜刀しますが、即座に打ち落とされ、絶体絶命のピンチに!
すると路地から九十郎が!かかってきた二人をあっという間に斬って捨てる!
これはかっこいい!なんてクールで強いんだ!渋い!渋すぎる!
この映画の前半の唯一の殺陣シーンです。
その九十郎が…、まさかあんなことになるなんて。

2-4.衝撃のラスト!

30分に及ぶ死闘を終え、大勢の死体が転がる宿場。
戦を終えようとしていた九十郎と弟子の庄次郎の前に敵の侍が斬りかかってきます。九十郎は刃を合わせますが刀が折れてしまいました。
すると九十郎は絶望の表情を浮かべて逃げ出し、そこらのものを投げながら、「庄次郎、刀!!…刀!!」と息も絶え絶えになりながら言います。
庄次郎が自分の刀を置いて渡そうとするもそれも拾えずに九十郎無残に斬り殺されてしまいました。このシーンの衝撃は凄かった…。

それまで劇中では剣一筋に生き、島田家の食客として剣の研究をし続け、明らかに劇中最強だった九十郎が、
新左衛門に「いつかこの人に身を捨てて報いる時が来るのを待っていた。」と言っていた九十郎が、
剣を失った時、死に直面した時、ここまで血相を変えて逃げ出すものかと…。
そこに「名誉の討ち死」といった武士の美学のようなものとの対比を感じました。

いかがだったでしょうか?この作品は2010年に三池崇史監督・役所広司主演でリメイクされたことでも有名ですね。2010年版は、敵の数が200人以上!稲垣吾郎が演じる斉韶が非道具合が凄すぎる!宿場の罠も凄い!と大アクション時代劇に仕上がっています。大成功したリメイク版としても知られています。2010年版と見比べてみるのもいいですね。

【参考文献】
時代劇は死なず! 著者:春日 太一

タイトルとURLをコピーしました