講師の渡辺です!今回紹介する時代劇は1990年放送の捕物サスペンス痛快時代劇の「神谷玄次郎捕物控」です。主演は古谷一行!原作は藤沢周平!殺陣振付は宇仁貫三!
これが連なったらもう見るしかない。何より古谷一行が渋かっこよかった!
目次
1.作品情報1-1.あらすじ1-2.作品概要1-3.登場人物1-4.同心って?2.殺陣2-1.「神谷玄次郎捕物控」の殺陣2-2.十手とは
1.作品情報
1-1.あらすじ
北町奉行同心・神谷玄次郎(古谷一行)は、奉行所でも札付きの怠け者で、浅草の小料理屋の女将・お津世(藤真利子)といい仲。
奉行所をサボってはお津世のところへ行き、上司や女中のおさくに「早く別れろ」と言われ続けている。そんな彼は、実は剣の達人で捜査の感も鋭いため、玄次郎配下の岡っ引きの銀蔵(芦屋雁之助)やなかなか手柄がたてられない後輩の鳥飼(唐沢寿明)に頼られて捜査に駆り出される。
全11話。
1-2.作品概要
原作は、藤沢周平による日本の連作短編時代小説。
神谷玄次郎が、天才的な集中力と鋭い観察眼、卓越した勘とひらめきで、真犯人を追いつめてゆく時代劇ミステリー。
事件の中の人間ドラマも見どころで、殺陣が少ない回もありますが、大捕物の殺陣がある回もあります!犯人を追いつめ、玄次郎自ら達人の剣で叩きのめす殺陣はとても痛快!
1-3.登場人物
神谷 玄次郎…古谷一行
奉行所きっての怠け者と言われてはいるものの、切れ者で常に冷静。同心としての実力は高い。しかも剣の達人!
しかしそれなのに朝寝ていて奉行所に行かなかったりサボって恋人・お津世の小料理屋に入り浸りのサボり魔。しかし配下の銀蔵は玄次郎の腕が確かなのをよくわかっているので信頼は厚い。上司の金子も何とかお津世と縁を切らせて奉行所の仕事に精を出してほしいと思っている。
剣の達人である玄次郎であるが、相手も腕が立つとなると「俺だってそんな奴を相手にするのは恐いさ。」と言わせるのが藤沢周平らしい。
古谷一行は劇団俳優座に入団するところから役者としてのキャリアをスタート。
名探偵・金田一耕助を演じて当たり役となる。
私にとって古谷一行はテレビドラマで、重要な役どころでよく出てくる渋い俳優というイメージですが、時代劇に出ているという印象はなかったです。しかし時代劇にもよく出ていて、主演もしている!
それもそのはず。この方とても渋かっこいい!
この人に任せておけば安心!というような胸を借りたくなるあこがれの先輩同心!というような。
神谷玄次郎や金田一耕助のような切れ者を演じさせたらこの人の右に出る人はいない!
お津世…藤真利子
玄次郎の恋人。小料理屋の女将で、玄次郎は奉行所をサボってはこの小料理屋に行って、二階でゴロゴロしたり酒を飲んだりしている。
お津世には亭主がいたのだが、子供を置いて姿を消してしまったらしい。
「女というものはこういうものですよ。」と女性の感情に熟知していて、それが事件のヒントになることも。
藤真利子がとても適役!少し暗い過去をもっているが普段はとても明るく、そしてたまに深酒をしてしまったり、料理をやってみようと作ってみたがまずいと言われいじけてしまったりとコミカルやり取りもしばしばあって面白い。
銀蔵…蘆屋雁之助
玄次郎配下の岡っ引き。髪結い床「花床」の主人でもある。
信頼を集めるいぶし銀の親分で、事件の流れはまず銀蔵が現場に出向き、お津世の店や家で寝ている玄次郎を呼びに来るところから始まるところが多い。
私が銀蔵のセリフで印象に残っているのは、
「あっしがおいと声を掛けりゃ、集まってくる下っぴきがゴマンといますから!ま、20人はいますから。」
蘆屋雁之助は「裸の大将放浪記」で知られる喜劇役者で、時代劇にも多く登場し、作品を盛り上げる。
この作品でも、渋いポジションでありながらたまに見せるコミカルさが面白い。ちょっとした表情の遣い方で笑いを誘うのがとても上手い…。
鳥飼道之丞…唐沢寿明
玄次郎の同僚。真面目に働いてはいるが考えが浅かったり少し小心者の一面もあったりとなかなか手柄が立てられず玄次郎の知恵を拝借することが多い。
剣術は不得手だが、小説版だと捕縛術に長けているらしい。
唐沢寿明が三枚目を演じているというのは私にとっては新鮮!
他にも、釣りバカ日誌の常務役で知られる加藤武が演じる上司の金子や、お津世の店の料理人で元岡っ引きの勝蔵に火野正平など、名優たちが脇を固めていて時代劇ファンのツボをここまでかと突いてきます。
1-4.同心って?
同心とは江戸の南北奉行所の配下として町奉行のもと、江戸の行政、警察、司法を担当していた武士。南北合わせて25騎の与力と、100名の同心が配属されていたとされます。
しかしこのうち警察業務を担当する同心は30人にも満たなかったそうで、到底人数が足りないので、銀蔵のような手先の岡っ引きと雇っていました。その下には大勢の下っ引きもいて、江戸全体では岡っ引きが500人。下っ引きが3000人いたとされています。
町奉行の配下なので町方と呼ばれます。
御家人たちが就いているので武士としての身分は高くはなく、劇中でも旗本の好き勝手な振る舞いに手が出せないという描写があります。しかし玄次郎は別ですが。
2.殺陣
2-1.「神谷玄次郎捕物控」の殺陣
この作品の殺陣を担当しているのは、宇仁貫三。私のツボを突いてくる渋い立ち廻りがあったら、もしやこの作品の殺陣氏は宇仁貫三さんか!?と思うと大体当たっている。
話がそれてしまったが、玄次郎は直心影流の達人という設定であるためか、捕物ドラマでよく出てくる十手は持ってはいるがあまり使わない。もっぱら刀を遣う。
やはり、下手人を斬らずに捕らえなければならないので、最初は合気道のような動きで相手を投げたり、蹴ったり殴ったりしている。これが渋い!
刀を抜いたら刃を返して峰打ちで敵を叩いていく。剣を遣って立ち廻りをやるのだが立場上相手を斬れないので峰打ちになるのは必然だ。
しかし相手が極悪人だったり、腕が立つとなると、峰打ちとは言っていられないようで、刃を戻して斬ることもある。
殺陣を見ていて気付くことは、あまり刃合わせしないというところだろうか。
テンポよく相手を倒していくので、刃合わせせずに倒して倒してというのは時代劇のお決まりでもありこの殺陣も例外ではないのだが、
相手の振ってきた剣の腕に自分の腕を当てて防ぎ、そのまま掴んで合気道風に投げたりするので、やはり捕縛術のような印象を受ける。
それに加え、峰打ちであるがゆえに刃合わせしないということもあるかもしれない。
日本刀は、峰と鎬は耐久性が弱く、ここを叩くと簡単に折れてしまう。それゆえ、玄次郎も刀が折れないように刃合わせをせずに敵を倒しているのかもしれない。
玄次郎が超達人だと思える描写が一つある。
ある回で玄次郎が悪さをしていた旗本3人をあばら小屋にて問い詰めるシーンがある。
旗本は、生意気なと斬りかかって来るが玄次郎はそれを鞘に入ったままの刀で跳ね飛ばし、飛んだ刀は天井に刺さる。
玄次郎が天井に刺さっている刀を叩くと、落ちてきた刀は、斬りかかってきたもう一人の目の前の壁に横に刺さったのである。
なんという神業!世の中広しと言えどもそんなことが出来る人物は玄次郎の他にはいないだろう。
ある回の殺陣では、これはスタントだ!と思うシーンがあった。
それは長門裕之扮する吉兵衛ことムササビの吉の匕首での立ち廻りだ。
吉兵衛は往年の恨みがあるやくざの屋敷へ忍び込むが、あと一歩のところで敵に囲まれる。多勢に無勢で手傷を負うが、カメラが切り替わり庭の映像になると吉兵衛が障子を突き破って庭に前転し、逃げてカメラからはけるも、次には再び長門裕之が入ってくる。
スタントマンが長門裕之よりも大分スリムになっていた。
吉兵衛はムササビの吉なので、ムササビのように身のこなしが出来る人物なのである。
このように顔が見えないような角度で取りながらカメラで切り替えてスタントと入れ替わることは時代劇でもよく行われるのです。
しかし、長門裕之の立ち廻りは迫力があってかっこよかった…!
2-2.十手とは
少し例外ではありますが、古谷一行版玄次郎はあまり十手を遣いませんが、2014年に高橋光臣が主演した玄次郎はかなり十手を遣います。大捕物の殺陣ではとても長い十手を遣っていました。
十手の殺陣がかなり印象的だったので、十手のことを少し紹介します。
十手とは樫・栗などの堅牢な木でできた棒の手元に鈎をつけた武器で、同心や岡っ引きが携帯しているので時代劇でもおなじみです。
なぜ十手と呼ぶのかと言えば、10本の手に匹敵する動きが出来るというのが由来だそうです。
時代劇では、主に相手の剣を鉤で受けてそれをどかして相手を叩いたり、剣を払って叩いたりと、テンポのいい動きが出来る得物です。
高橋光臣版玄次郎はこの十手で敵をバシバシと叩きのめしていてかっこよかったです。
私はこれを見て十手の殺陣がやりたくなり、武術の師に十手の遣い方を教わりましたが、十手の遣い方とは、相手の剣を受けて柔術をかけ、相手を無力化する武器であるので、遣うものには柔術の心得が必要となります。
それに加え、本気で打ってきている相手の剣を十手で受けるのはとても危なく、かなりレベルの高い技術が要求されるようです。
もしかしたら実際には捕物で十手の出番はあまりなかったのかもしれません。
十手は携帯していることで警察手帳のような役割を担っており、劇中でも銀蔵が事件を探っている時に、話を聞きたい人に対して、「こういうものなんだが」と十手を見せる場面があります。
今回は「神谷玄次郎捕物控」を紹介しました!
現在視聴出来るのは、古谷一行版はAmazonプライムの時代劇専門チャンネルNET、高橋光臣版はU-NEXTです。
どちらも面白いです!見比べてみては!?