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刀のお手入れとは!

刀剣の知識・刀剣秘話

今回は刀のお手入れについて紹介いたします!
時代劇でよく刀のお手入れシーンは出てくると思いますが、あれは具体的には何をやっているのでしょう。あのポンポンしてるのは何!?
それを分かりやすく書いて参ります!

なぜお手入れが必要なの!?


刀は鉄で出来ているのでそのままにしておくと錆びてしまいます。
刀に錆がありさらにそれを放っておくと、錆はどんどん広がって修復も難しくなります。
美術品としての価値も大きく下げてしまいます。

そのため、錆びないように油を塗ります。
しかし塗った油はしばらくすると酸化します。
酸化した油は金属に悪い影響を与えてしまうので、油を塗り替える必要があるのです。
すなわちそれが刀のお手入れです。

時代劇で刀をお手入れするシーンのあのポンポンしてるのは何!?

時代劇で刀をお手入れするシーンは、時代劇を見る人なら必ず見たことがあると思います。
そのシーンでは白い丸い何かでポンポンしていますよね。

あのポンポンは一体何をしているのかというと、打ち粉という粉を刀身に付けて、古い油を取り除く作業をしています。
刀に油が付いている状態でまた新しい油を付けてしまうとベタベタしてホコリなどが付きやすくなってしまうので、古い油は取り除く必要があります。

打ち粉はすなわち砥石の粉であり、それを刀身にポンポンとまんべんなく付けると、古い油を吸い取ってくれます。
そしてそれを拭い紙で拭えば、古い油を取り除けるというわけです。

さて、お手入れを始めよう!

用意するもの

・拭紙(ぬぐいがみ)

奉書紙(ほうしょし)をよく揉んで柔らかくしたもの。油取りに使う下拭い用と打粉取りに使う 上拭い用の2種類を用意します。

・打ち粉
砥石の粉末を綿、絹でくるんだものです。刀身をたたくと、白い粉が出ます。

・目釘抜(めくぎぬき)
目釘を抜くためのもので、真鍮製のものや竹製のものがあります。

・油
刀身の錆を防止するために塗る油で、丁子油(ちょうじあぶら)と呼ばれます。

・油塗紙
刀身に油を塗るためのもの。拭い紙などを適度な大きさに切って使います。

お手入れ方法

まずは刀に一礼する。この時刃側を自分に向けます。

1.刀の目釘を抜く
刀を横にして下に置き、目釘抜きで目釘を抜きます。
この時、抜いた目釘はなくさないように抜いた後柄の目釘穴の小さい方の穴に差しておきましょう。

2.刀を鞘から抜く
刀を鞘から抜くのですが、この時必ず刃を上に向けます。
刃を上に向けた状態で鞘を左手で下から持ち、軽く鯉口を切って鞘の方をゆっくりと上に持ち上げて抜いていきます。
鯉口を切る時はそっと切りましょう。ガバッとやると指などを切る恐れがあります。

3.刀を柄から外す
柄を左手で握り、刀を斜めに立てて右手で拳を作り左手の手首をトントンと叩きます。
これをすることで刀身の茎(なかご)が緩みます。さらに叩くと刀身が柄から抜けていきますので、右手で茎をつかんで柄を外します。

左手の手首を叩く時も、叩く勢いが強いと刀身が飛び出す恐れがあるので要注意です。
柄を抜いたら、残りのハバキも、拵えのある物なら切羽、鍔も茎から外します。
これで、刀身のみになります。

4.刀に付いている古い油やゴミを拭う
拭い紙を使って古い油やゴミを拭います。
拭い紙を棟の方から当て、刃を親指と人差し指で軽く押さえて、上の刃先に向かってゆっくりと拭っていきます。

最後は刃先にそってスッと抜きます。これは下拭いです。
あまり取れない場合は、脱脂綿にベンジンか無水アルコールを付けて、同じように拭います。

5.打ち粉を使って古い油を完全に取り除く
次に刀身に打ち粉を付けていきます。
刀の差表のハバキ元から刃先の方へポンポンと打ち粉をまんべんなく付けていき、次に裏返して今度は刃先からハバキ元に向かって付けていきます。最後に棟にも軽く付けます。

そしたら再び拭い紙で下拭いと同様に刀を拭っていきます。これが上拭いです。綺麗にならない場合は再び打ち粉を付け繰り返します。

6.新しい油を塗る
油塗紙を適当な大きさにたたみ(幅3cm、長さ6cmくらいが理想)、新しい油を付け、やはり棟の方から当てて拭いと同じ要領で油をまんべんなく塗っていきます。
塗ってない場所がないように必要であれば2、3回繰り返します。

この時、油を塗りすぎると鞘に支障をきたす場合があるので、少なすぎず多すぎずムラなく塗りたいです。

7.刀身を鞘に納める
ハバキ(その他切羽、鍔)を付け、茎を柄に納めます。
茎が入ったら刀を左手持った状態で柄頭を下から右手の手のひらで軽く叩きしっかりと納めます。
そしたら目釘を打って鞘に納めます。

これでお手入れは完了です。

終わったら刀に一礼です。

どのくらいの頻度でお手入れするの!?

昔、刀を帯刀していた時代などはこまめにお手入れしていたそうですが、現代では頻繁に汚れが付くわけではないので、たまに鞘から出して鑑賞する程度あれば3カ月に1度が目安のようです。
普段鞘から出した状態で保管しているのであれば汚れが付いてしまうのでもう少し頻繁にお手入れする必要があります。

鞘に要注意!

どんなに丁寧にお手入れしていても錆びてしまう場合には、鞘に問題がある場合が多いそうです。
刀身が鞘の中で鞘に当たっている「鞘当たり」が起きている場合は鞘師に頼んで直してもらう必要があります。

また、鞘の中に錆が汚れがある場合にはそのせいで刀身が錆びてしまうので、鞘師に頼んで新しい鞘を作ってもらわなくてはなりません。

「鞘鳴り」「鍔鳴り」は恥ずかしい!

ついでに「鞘鳴り」「鍔鳴り」について書きます。

「鍔鳴り」などは時代劇などでは刀を構えたり刀を返したりする時に「チャッ」と鳴るあの音です。立ち廻りが映えるかっこいい音として強調されていますが、実はよくないことなんです。

「鞘鳴り」は刀身と鞘の反りが合っていないためにカタカタと鳴ってしまうこと。
「鍔鳴り」は拵えがピッタリ収まっておらず緩くなっている状態。

「鞘鳴り」が良くないことは先に「鞘当たり」として書きましたが、「鍔鳴り」も放っておくと目釘に負担がかかって折れ、刀身が柄から抜けてしまうというとんでもなく危ないことになりかねません。

また、音が鳴るということは敵に居場所を教えてしまうようなものなので、恥ずべきことです。
これらが起きている場合にはすぐに職人さんにお願いして直してもらった方が良いでしょう。

今回は刀のお手入れについて書いていきました!
刀を所持していないと、刀剣博物館でやっている体験会に行ったりしない限りは刀のお手入れをする機会はないと思いますが、
何をやっているのか知っておく、また所作の一つとして知っておくだけでも違うと思いますので、このコラムが役立つと幸いです。

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