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忍者が実際に使った忍術

歴史コラム

忍者についてのコラムが続いておりましたが、今回は「忍術」に注目していきたいと思います。
皆さんが想像する忍術はどのようなものでしょうか。漫画やアニメの忍者達は魔法のようなものが多く、忍術で戦うイメージが強いかと思います。
実際の忍者は、はたしてアニメのような忍術を使用していたのでしょうか。皆さんが知っている忍術から、知らないであろうものまで幅広くいろいろな忍術を見ていきたいと思います。

目次

1.忍術の実態
2.遁法
2-1.水遁の術
2-2.火遁の術
3.隠形
3-1.観音隠れ
3-2.木の葉隠れ
4.撒菱
4-1.撒菱退き
4-2.糸菱の法
5.その他の術
まとめ

1.忍術の実態

まずは忍者が実際に使用していた忍術はどのようなものかを見ていきたいと思います。
忍術秘伝書等を見てみると、漫画やアニメのような魔法のような忍術は一切なく、今の私達からしてみると、このような術で騙される人がいるのかと疑問に思ってしまうものが多いです。
忍術のトリックは拍子抜けしてしまうほど簡単なものが多く、基本的に身ひとつで出来るものが殆どです。その理由は当時情報が広まるのが遅かった為、忍術のトリックが何度使ってもばれる事が少なく、忍者は身軽の状態の方が都合よく、また貧乏だったので身一つで簡単なトリックの忍術が多かったそうです。
また当時は街灯などが無く隠れたりするのは簡単だった為、現在の私達が忍術を見てみると、こんなものが忍術として成り立つのかと思ってしまうようです。
忍者が使っていたと思われる忍術を見ていきたいと思います。

2.遁法

まずは「遁法」と言われる忍術を紹介していきたいと思います。
遁法とは簡単に説明すると逃げる時に使う忍術、逃走法です。忍者の仕事内容が情報収集メインだった為、無理して戦う必要は無く、敵と出会っても生きて情報を持ち帰る事が大切でした。
そんな遁法を紹介して行きたいと思います。

2-1.水遁の術

誰もが聴いた事のある術の1つでもある「水遁の術」から紹介いたします。
まず忍者が忍び込む「お城」などの砦の周りには堀があり水がありました。その水を利用した遁法を「水遁の術」呼びます。

水遁の術①
水の中に飛び込む
当時は泳ぐ事が出来る人は少なかったようです。その為、水の中に飛び込んでしまうと追っては諦めるしかなくなってしまいました。
しかし、跳び込む忍者にもリスクが有り逃げ切った時に全身びしょ濡れですので、とても目立ってしまうので、このような水遁の術をする際には事前に着替えの準備をしていたそうです。

水遁の術②
もう一つの水遁の術は「音」を利用したものでした。
逃げている最中に、大きめの石等を水に投げ込み、追ってに水中に逃げたと思わせる方法でした。こちらも事前に手ごろな石を準備しておく必要がありましたが、リスクも低くこちらの水遁の術がよく使われていたようです。

水遁の術③
最後に紹介する水遁の術は竹筒等をシュノーケル代わりに使用し、水中に潜む方法です。
こちらの水遁の術は皆さんが想像する「水遁の術」だと思われますが、実際は息が出来るほどの竹筒を水面に浮かべてしまうのはとても不自然だった為、実際には使われていなかったそうです。

2-2.火遁の術

次は火遁の術についての紹介をしていきたいと思います。
アニメや漫画の影響で火遁の術と聞くと「火を吹く」ことを想像しがちですが、遁術なので攻撃のする技ではないのでこのような術では無かったそうです。
では実際はどのような術だったのでしょうか。

火遁の術①
最も簡単な火遁の術は、潜入する城や家等にあらかじめ放火をしておき、潜入し作業をして火事に逃げ惑う人々に紛れて逃げるという術でした。
大切な情報はお城の中心部にある事が多く、任務を遂行している間に火事が大きくなりすぎて逃げ出せなくなる可能性も高かった為、火の広がり方などに熟知している必要がありました。

火遁の術②
一番派手でイメージに少し近い火遁の術は、爆竹を使った火遁の術でした。
敵から逃げている最中に壁などに隠れ爆竹を点火します。そうすると追手は火器を持っていると勘違いし、爆竹が鳴っている間は物陰に隠れてしまう事になります。この間に忍者は逃げるという術です。

火遁の術③
火を使う遁術で想像するのは、煙幕を使った遁法だと思いますが、煙幕や煙玉は当時の技術では制作不可能だった為、創作でのお話しだったようです。

3.隠形

忍術を見ていくと、任務を遂行するために生存率を上げるものが殆どで、戦う時に使用するのではなく、戦う状況を作らないようにするための忍術が使用されていたようです。
その中でも隠形と言われる忍術は、隠れる為の忍術でした。

3-1.観音隠れ

観音隠れは木を利用した忍術でした。立木や壁の側で、顔を袖で隠して立つというとてもシンプルな忍術でした。忍術的には木等の側で隠呪を唱えると敵から見えなくなるという術でした。
これだけを聞くと、果たして効果があったのか疑問に思うかと思われますが、探す側は小さい所に隠れているという先入観を利用した忍術でした。
観音隠れ以外にも「鶉隠れ」という忍術がありますが、こちらは庭のど真ん中等、何も無い場所で敵の見張りが来てしまった場合に背中を丸めて頭を隠しじっと待つという忍術でした。
このように探す側の盲点をつく忍術が多かったようです。

3-2.木の葉隠れ

木の葉隠れと言われると枯れ葉が舞い散り、気づいたら姿が消えているという術を想像する方が多いかと思いますが、実際はどのような忍術だったのでしょうか。
実際は派手な忍術では無く、立ち木に等の物陰に隠れるだけの術でした。
なぜ木の葉隠れと言われるのかは、隠れているものからはみ出した部分が木の葉の陰に誤解させる術としていたからです。
その他に草葉隠れという術もあり、こちらは藪の中に隠れる術で、風の吹いている日によく使われていました。風の吹いている日は忍者が藪に飛び込んでも音が掻き消され上手く忍ぶことが出来たそうです。

これらのほかには大きな木の上に上り身を潜める「狸隠れ」や枯れ葉や藻を顔に貼り付け水に潜り、顔だけ出す「狐隠れ」などの隠形の術がありました。
どれも身をどこかに潜めるだけの事でしたが、立派な忍術でした。

4.撒菱

手裏剣、苦無に並んで忍者の使う道具で想像するものが「撒菱(まきびし)」だと思います。
敵に踏ませて時間を稼ぐ道具という事は簡単に想像できるかと思いますが、どのように使われていたのでしょうか。

4-1.撒菱退き

「撒菱退き」という忍術があります。文字通りの術なのですが皆さんが想像するような、逃げている最中に撒菱をばらまき、時間を稼ぐ術では無く、事前に逃走ルートに撒菱を撒いておき、逃走している時にその箇所を通過するときは摺り足をして踏まないようにし、追手に撒菱を踏ませ時間を稼ぐという術でした。
そもそも撒菱を撒くのを目視されていたら、相手も踏まないように少し道を外れればいいだけですので、時間を稼げても数秒程度になってしまいますね。実際にこのような使い方をするときは、緊急時で2.3秒時間がほしい時などのみだったようです。

4-2.糸菱の法

撒菱を使った忍術として「糸菱の法」という忍術がありました。
この忍術は2~3mの糸に撒菱を結び付けたものを腰に付けて走るというものです。
とても恰好悪い術でしたが、貧乏な忍者にとってコストをおさえられ、この撒菱がある場所には近づけないのでとても効率の良い術だったようです。

5.その他の術

ここまで対人にたいして使用する術を紹介していきました。これら以外にも忍術は沢山ありました。
敵地への潜入口を事前に見つけておくという「物見の術」や見張りの気が緩むタイミングで潜入する「入堕帰(いりだき)の術」などの術もあります。
忍術は本当に沢山あり、紹介したらきりが無くなってしまいますが、どれもトリックは似たようなレベルのもので、これでも忍術になってしまうのかと思ってしまうものばかりでした。
しかし多くの当たり前の事を忍術としておくことによって、様々な状況下で対策を考える時間が減り、忍術を使用している事で行動に自身が付き生存率が上がったそうです。

まとめ

今回は忍者が使っていた忍術を紹介していきました。
どの忍術もトリックは本当に簡単で、本当にこれが忍術とされていたのかと疑問に思う事が多かったです。
ちなみによく聞く「くのいちの術」は女忍者が酒や性愛を駆使し情報を聞き出す術なのですが、当時は衆道(男同士の愛)も盛んだった為、きれいな男を使った「くのいちの術」もあったそうです。
「くのいち」は女という漢字から来ており、男忍者を指す言葉は男という漢字から「たぢから」といったそうです。

忍術はどれも先人たちの知恵や経験が活かされたもので、身分が下級武士よりも低く、貧乏な忍者が生き残るための術だったのかもしれませんね。
ここまで3回に渡り忍者についての記事が続きましたが、実際の忍者は創作のものとはかなり違いました。しかし実際の忍者は武士がやりたがらない仕事で、自国が勝つ為には必ず必要な存在でした。
調べて行くとそんな忍者達にも武士道とは違いますが誰もやれない、やりたくない仕事をどんな手を使っても完遂するという強い信念が感じられました。
忍者はそんな信念に魅力を感じる人が多かったので、歌舞伎や読本などで題材にされ、今でも国内外問わず人気のある存在になったのではないでしょうか。

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